モデル就業規則(雛形就業規則)の問題点
労働基準監督署が無料で配布しているものや、インターネットで入手できるモデル就業規則は、穴埋め式などで書き込むだけで簡単に就業規則が作成できます。労働基準監督署では、就業規則を規定通りに届け出さえしてくれればいいのです。モデル就業規則のままでも、届け出の際、書類が整ってさえいれば受理されます。しかし、受理されたといっても、内容について承認したわけではないのです。簡単に作成したモデル就業規則で、もしトラブルが起きても会社の自己責任になってしまいます。
また、ほとんどのモデル就業規則は大企業向けです。中小企業の実態には当てはまりません。就業規則なんてモデル就業規則で十分だと思っている方もいますが、モデル就業規則は以下のような問題点があります。
・事業主様の思い(経営理念・経営指針)を反映していない
・最新の労働基準法等、諸法令に対応していない
・自社の現状に即していない
・自分で法令等を確認しなければいけない
・費用がかからない。または小額。
1、事業主様の思い(経営理念・経営指針)を反映していない
自社で定めている経営理念・経営指針があることでしょう。モデル就業規則を使うと、単なる穴埋めの感覚で就業規則を作成してしまいますので、従業員に就業規則を通じて経営理念・経営指針を伝えることはできません。
当センターでは、就業規則の中に経営理念・経営指針を盛り込み、就業規則と連動して経営者の思いを載せるように推進しています。
2、最新の労働基準法等、諸法令に対応していない
モデル就業規則が常に最新の労働基準法等、諸法令に準拠しているとは限りません。労働基準法等、諸法令は法律改正、社会情勢にあわせて常に変化し続けます。
書籍などに載っているモデル就業規則の場合は、その書籍の発行年月日によっては最新の労働基準法等、諸法令に対応していない可能性が高くなります。また、最近のものであったとしても直近に改正された労働基準法等、諸法令にまでは対応できていません。ホームページからダウンロードしたモデル就業規則の場合は、ホームページの更新が行なわれていなければ、当然、改正されていない労働基準法等、諸法令をもとに作成されています。モデル就業規則を使う場合には、しっかりと最新の労働基準法等、諸法令に準拠しているかどうかを確認する必要があります。
また、法改正によってその基準が上げられたことにより、就業規則が法律以下の基準になってしまった場合には、その基準以下になった部分に関しては無効になり、法律が優先されます。
3、自社の現状に即していない
モデル就業規則は大企業向けに作成されていますので、これをそのまま中小企業が使用すると、実情に合わない高水準の規定になってしまいます。また、それぞれの会社に企業慣行がありますので、すべての会社にモデル就業規則がきっちりとあてはまるわけではありません。そのような就業規則を従業員に胸を張って見せることができるでしょうか。見せた瞬間、余計なトラブルの火種になることさえあります。
モデル就業規則を使う場合には、しっかりと自社の現状にあっているのかを確認する必要があります。
4、自分で法令等を調べなければならない
労働基準法等、諸法令に違反しているように見えることも、しっかりと手続きさえ踏めば、全然違法ではないことはたくさんあります。
企業慣行を就業規則に記載する際には、それが本当に違法なことになるのか、それとも上手な方法があるのかを確認調査をする必要があります。モデル就業規則には会社ごとに即した上手な方法まで記載されていません。
モデル就業規則を使い、自社の現状に即した就業規則を作成するためには、労働基準法等、諸法令の知識をしっかりと身につけたうえで使用する必要があります。
5、費用がかからない。または小額。
モデル就業規則を使用する上で考えられる利点としては、費用がかからない、または小額(数千円〜)であることではないでしょうか。通常、社会保険労務士などに頼めば数十万円するものを無料〜数千円で手に入れることが可能です。
しかし、考えてみると、通常なら数十万円〜で販売している物を無料〜数千円で、通常、配ったりしますでしょうか。
モデル就業規則は上記でも記載している通り、本来穴だらけのものです。その穴を埋めるためには、労働基準法等、諸法令や判例の勉強をする必要があります。
当然、勉強するためにはそれだけ時間が掛かかります。その間は、本来の業務に従事できなくなります。さらに、モデル就業規則をそのまま使った場合には、労使トラブルの発生する確率は高くなり、いざ、トラブルが発生した時にはトラブルを鎮めるために、より多くの時間とお金を掛ける必要が出てきます。
モデル就業規則を使用する場合には、本当に費用がかかっていないのかを考える必要があります。
【上記の問題点から考えると就業規則は、モデル就業規則でとりあえず形になればいいというものではないのです。会社を守るには、それぞれの会社の実情に合った就業規則を作成しなければいけないのです。】
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