労使協定・36協定
■ 労使協定とは |
労使協定とは、「使用者と労働者の代表者との間で労働条件などについて取り決める書面での協定」のことをいいます。
ここでいう、労働者の代表とは、「労働者の過半数で組織する労働組合がある場合はその労働組合、過半数労働組合がない場合は、労働者の過半数を代表するもの」となります。労働者の代表の決め方としては次のことが考えられます。
・ 投票を行い、過半数の労働者の支持を得た者
・ 朝礼、集会などで挙手を行う
・ 候補者を決めておいて、投票や挙手を行う
さらに、代表者になった人が管理監督者に該当しないことが必要です。
労働基準法では、例えば変形労働時間制など労働条件によっては労使協定を締結することが必要となってくる場合があります。また労働基準監督署への届出も必要なものもあります。
■ 労使協定の効果 |
労働基準法上の労使協定の効力は、労使協定に定められていることをしてもいいですよという効果しかありません。労使協定だけでは従業員に労使協定の内容を強制することはできません。
つまり、免罰的効力を有するだけであり、使用者の労働者に対する指揮命令権は発生しません。ここでいう、免罰的効力とは「本来、法違反であるものを、法違反とは問わず、罪を免れる」という効力です。
したがって、労使協定の内容を従業員に強制し、指揮命令権を発生させるためには、就業規則や労働協約にその旨を記載する必要があります。
■ 労働基準法で労使協定の締結が必要とされているもの |
該当事項 | 労働基準法条文 | 届出 |
任意貯蓄(社内預金・通帳保管) | 18条2項 | 必要 |
賃金の一部控除 | 24条1項 | 不要 |
一箇月単位の変形労働時間制 | 32条2第2項 | 必要(※1) |
フレックスタイム制 | 32条3項 | 不要 |
一年単位の変形労働時間制 | 32条4第4項 | 必要 |
一週間単位の非定型的変形労働時間制 | 32条5第3項 | 必要 |
一斉休憩の適用除外 | 34条2項 | 不要 |
時間外・休日労働協定 | 36条1項 | 必要 |
事業場外労働に関するみなし労働時間制 | 38条2第3項 | 必要(※2) |
専門業務型裁量労働制 | 38条3第2項 | 必要 |
年次有給休暇の計画的付与 | 39条5項 | 必要 |
年次有給休暇の賃金(標準報酬日額) | 39条6項 | 不要 |
※1 就業規則により定めた場合は、労使協定の締結は不要。
※2 協定で定める時間が法定労働時間を超える場合のみ届出が必要。
■ 36協定とは |
1.36協定とは
労使協定の種類の一つであり、時間外・休日労働に関する協定を36協定と呼びます。この呼び方は、労働基準法36条で定められているところから来ています。法律で定める労働時間(法定労働時間)を越える労働または休日出勤を行なう場合には、従業員の過半数で組織する労働組合または従業員の過半数を代表するものとの間で36協定を締結しなければいけません。締結した36協定を労働基準監督署に届出をする必要があります。届出をせずして時間外・休日労働をさせた場合には、仮に締結をしていても違法となってしまいます。また、労働基準監督署の調査の際には必ず提出を求められます。
2.36協定での取り扱い
36協定でいう労働者とは、事業場に使用されている全ての労働者のことであり
・法第41条の2号による管理監督者
・同条の3号の監視又は断続的労働に従事するもの
(労働基準監督署長の許可を受けた者)
・休職中・出張中・年少者等の者
も含みます。
したがって、過半数代表者を選出する際の労働者の算定には、上記の者も含めることとなります。
上記でいう、過半数代表者とは、
・法第41条第2号に規定による監督又は管理の地位に当たらない者
・法に定めている協定当事者を選出することを明確にして行われる挙手や
投票などの方法により選出された者であること
この2つの要件に当てはまる者であることが必要となります。
一つの事業場に二つ以上の労働組合がある場合
一つの労働組合がその事業場の労働者の過半数で組織されている時はその労働組合と協定をすれば良く、その他の労働組合と協定する必要はありません。しかし、どの労働組合も労働者の過半数で組織されていない場合には労働者の過半数代表者と協定することが必要となってきます。
派遣中の労働者の扱いとしては、派遣先の事業主は派遣された労働者に対し時間外・休日労働を指示することがありますが、労使協定を締結し、届出をする義務があるのはあくまで派遣元の事業主となります。
3.36協定の効力
36協定を締結すれば、それだけで従業員に時間外労働や休日労働をさせることができるわけではありません。
現実に時間外労働または休日出勤を行なわせ、その指揮命令権を発生させるためには、そのことを就業規則に記載、周知する必要があります。
4.36協定の必要性
36協定を締結せずに法定労働時間を越える労働及び休日出勤を行なった場合には、労働基準法第119条により6ヶ月以下の懲役または30万円の罰金になる場合があります。
特に36協定の提出違反は、労働基準監督署の調査時に、是正勧告を受けるケースがありますので注意が必要です。
Page Top
【 関連サイト 】
この改行は必要→